Department of LABORATORY MEDICINE

 就任12年目のご挨拶
栁原克紀教授
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学分野 教授
長崎大学医学部 臨床検査医学 教授
 長崎大学病院 臨床検査科/検査部 部長
栁原 克紀


 2013年1月1日に長崎大学大学院 病態解析・診断学分野(臨床検査医学)の教授、および長崎大学病院検査部長を拝命し、11年が経過し、12年目を迎えています。2021年には臨床検査科を設立していただき、診療科としても活動を始めました。教室の使命は、臨床検査医学に関する診療、教育、研究活動を行いながら、基礎医学と臨床医学の橋渡しや診療支援をすることと考え、邁進して参りました。安全・安心でかつ最先端の医療を推進する上で、臨床検査は必須のものであると実感しています。以下に、今後の抱負を述べます。

2024年8月吉日


診 療
診療  私たちは患者さんを受け持つことはありませんが、検査を通じて患者さんを診ております。長崎大学病院検査部の責務は、大学病院で行われる高度先進医療を支え、診療に貢献することです。当院検査部は2017年3月16日にISO15189:2012の認定を取得しました。当院の検査データは国際的にも認められたことになりました。その後も更新を続けて、2024年にはISO15189:2022を取得できる見込みです。
 2019年12月に発生したCOVID-19は、パンデミックとして猛威を振るいました。長崎大学病院検査部では、全国的にも早い時期にPCR検査を開始し、計13万件の検査を実施して、院内および県内における診療や感染対策に貢献できたものと思います。このPCR検査で得たknow-howを何かに応用できないかを検討しています。また、主に研究で使われていた次世代シークエンサー(NGS)を診療にも活用していきたいと考えています。新しい取り組みとして、2023年5月に開始された睡眠時無呼吸検査にも寄与しています。
 これから期待されることは、医師の働き方改革に対する支援です。臨床検査技師ができる業務は積極的に取り組んで、医師の負担軽減を進めます。

教 育
教育  卒前教育;医学教育は単なる知識の習得ではなく、少ない基本的事項から深い洞察力を発揮できるかが重要になります。検査値は単なる数字にすぎませんが、異常値がでる病態を把握できるようなスキルも身につくように指導します。
 新しい検査も将来的に重要になりますので、それらに関する情報も提供します。臨床実習では、検査を実際に行わせ、検査の意義について深く理解できるように努めます。
 卒後教育;医学の進歩に伴い、検査の種類は膨大になってきており、検査データを幅広く解釈できる医師が必要とされています。臨床検査の専攻医に2名入っていますが、多くの臨床検査専門医を育成したいと考えております。

研 究
研究  感染症は全ての診療科に関連する疾患ですし、薬剤耐性菌による院内感染症は社会的に深刻な問題です。国際的にも大変深刻な薬剤耐性菌の問題の解決に、少しでもお役に立てれば、と考えています。ここ数年で、薬剤耐性菌に対する新薬がいくつか上市されますが、薬剤選択には検査結果が大きく影響します。このように感染症診療と臨床検査の結びつきは強くなってきており、Molecular diagnosis を含めた新しい検査法の確立を目指したいと考えております。HTLV-Iの研究で培った経験を踏まえ、ウイルス感染症の診断ならびに感染症に伴う発がんにも積極的に進めています。HTLV-I 感染からATL発症までの解析は、当教室でも長らく取り組んできたテーマであり、さらなる発展を期待しています。また、ウイルス領域では、COVID-19との闘いはまだ続きそうですので、診療に役立つ知見を得たいと思います。
 消化管や生殖器、皮膚組織などのマイクロバイオームが注目され、疾患の発生機序や予防に応用できることが分かってきました。いくつかの診療科とも既に共同研究を進めています。マイクロバイオームは感染症のみならず、がんや精神疾患とも関与も注目されており、重要な研究分野として注力していきます。